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従業員の退職後の住民税について~会社側の事務手続きと従業員側の質問~
従業員退職後の住民税について
皆さんの中にもタイトルをみて思い当たる方も多いのではないのでしょうか?
従業員の方が退職した後の住民税についてどうすればいいのか分からない方、若しくは退職した従業員の方から住民税のことについて質問を受けた方など、従業員が退職をした時・した後の住民税は少しややこしいと思います。
今回のコラムでは、そんな従業員の退職後の住民税について解説しようと思います。
まず、次の章で従業員が退職する時の会社側の処理について解説をします。
そのあとの章では退職する従業員側で多い質問について解説します。
退職後の住民税についての不安が、このコラムを読んで少しでもなくなってもらえればと思います。
住民税の仕組みと退職時の会社側の事務処理について
会社側の処理の話に入る前に、住民税の仕組みについて説明をしようと思います。
住民税の仕組み
住民税の納付期間は少し特殊です。
所得税の納付期間については、1月から12月の暦年をベースに毎月の給料から徴収をされ、年末調整で還付されたり、追加徴収されたりすると思います。
確定申告が必要な方については、3月15日までに確定申告を行って還付されたり、追加徴収されていると思います。
日本のイメージ的に「1月から12月」や「4月から3月」が1年と思ってしますことが多いと思いますが、住民税は違います。
住民税の納付期間は「6月から翌5月」と少し変わった納付期間になっています。
しかも、その税額の計算期間については「前年の1月から12月まで」の所得を基に計算されることになります。
そのため、所得(収入)がなかったとしても住民税だけは払わないといけないことになるのです。
例えば、野球選手で年俸1億円貰っていた人が引退して収入がなくなった場合、前年の1億円を基に住民税が計算されるので、6月から翌5月までに収入はないのに住民税を納付する必要があるということになります。
このように住民税の仕組みは、収入がなくなった後に納付期間が来てしまうという収入時期と納付時期にズレが発生する税金になっているのです。
それでは本題の従業員が退職した場合の会社側の事務処理について説明していきます。
➀6月から12月末までに退職する場合
住民税の会社側の処理としては、「6月から12月末まで」に退職する場合と、「1月から5月末まで」に退職する場合で処理をする方法が変わります。
6月から12月末までに退職をする場合は、会社側は「給与所得者異動届出書」という書類を各従業員の住所地の市町村に提出する必要があります。
これは、給料を払い会社側が「退職したため住民税の特別徴収ができない」という届出になり、これを提出することによって、住民税が特別徴収から普通徴収へと切り替わります。
※「特別徴収」とは会社が従業員の給料から住民税を天引きして預り、代わりに納付する方法を言います。「普通徴収」とは本人が直接納付する方法を言います。
「給与所得者異動届出書」の提出期限は退職日を入れた月の翌月10日となっています。
例えば、7月31日退職なら8月10日まで、8月1日退職なら9月10日まで この提出を忘れてしまうと、退職をした後も退職した従業員の住民税を、従業員の給料から天引きできないまま会社が納付しつづけることになります。
この場合に会社が代わりに払った住民税を取り返そうと思うと、退職をした従業員の方から直接回収しなければいけなくなるので、手間が増えてしまうことになります。
徴収できればいいですが徴収できなければトラブルに発展することになるので、従業員の方が退職した場合には忘れずに翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を従業員の住所地の市町村に提出して、従業員自身で納付する普通徴収に切り替えてください。
②1月から5月末までに退職する場合
次に「1月から5月末まで」に退職する場合です。
この場合は➀と違い「給与所得者異動届出書」を提出する必要はありません。
ではどうするのか。 この場合は給料から残りの住民税を一括徴収します。最後の給料から数か月分を纏めて預り、各月の住民税の納付を行います。
ただし、最後の給料から天引きする住民税の額が支給額を上回る場合には普通徴収に切り替える必要があるため➀と同じように届出をしてもらう必要があります。
➀と比べると会社側として行うことは給料から残り分を天引きするということだけですので、事務処理としては比較的楽だと思います。
ただし、残り分の徴収を忘れて通常通り1ヶ月分だけしかしなかった場合には、➀の時と同様に従業員の方から返してもらうか普通徴収への切り替えをしていただく必要があるので、忘れずに残額を一括で徴収しきってしまいましょう。
③退職前に次の転職先が決まっていて特別徴収を継続する場合
退職前に転職先が決まっている場合に特別徴収を継続することもできます。
従業員の方的には転職先がばれたくないと思うこともあると思いますので、あまり手続きをすることはないかと思いますが、一様方法としては可能です。
その場合には、「給与所得者異動届出書」の記載欄に「新しい勤務先」という欄があるのでそちらに新しい勤務先を書いていただいて、新しい勤務先の方に連絡してもらうという方法で特別徴収を継続することが可能となります。
ただし、新しい勤務先との間で連絡を取るなど事務手続きが必要になるので手間が多くなってしまいます。
従業員の方が退職した場合の会社側の処理としては以上の方法になります。
届出を出すことを忘れる方が多く退職している従業員の方の分も会社で納付してしまっている方も多いと思います。
従業員の方が退職した後には忘れずに「給与所得者異動届出書」を市町村に提出するようにしましょう!届出書については各市町村のHPなどで入手することができます。
市役所で入手してそのまま書いて提出することも可能だと思います。 ここに伊賀市の分と名張市の分と載せておきますので使用してください。
伊賀市→https://www.city.iga.lg.jp/cmsfiles/contents/0000002/2669/2.idotodokeyousi.r4.pdf
名張市→https://www.city.nabari.lg.jp/s015/030/100/040/110/idoutodokedesho.pdf
退職した従業員の方で多い住民税についての質問
Q1:最後の給料からの住民税の天引き額が多いのですがなぜですか?
A1:前章でも説明してある通り、退職時期によっては一括で徴収されてしまうからです。例えば4月末退職の場合「4月分・5月分」の2ヵ月分が給料から天引きされることになります。
Q2:退職後に市役所から納付書が送られてきて金額をみると多すぎる気がするのですが?
A2:住民税の普通徴収は年4回(6月・8月・10月・1月)の納付になるためです。
例えば毎月住民税が1万円の従業員の場合、年間12万円を6月から翌5月までの12ヶ月で納付することになります。8月末で退職した場合には「6月分・7月分・8月分」は給料から天引きをされて納付されていますが、残りの9か月分を普通徴収で納付することになります。普通徴収の納付月は6月・8月・10月・1月ですので、6月と8月はすでに過ぎているので、9か月分(9万円)を残りの2回に按分して払うことになるので、1回あたり4万5,000円と多くなってしまいます。納付する住民税の合計額については、特別徴収も普通徴収も変わりません。
Q3:転職先でも特別徴収を継続したいのですが可能ですか?
A3:可能です。方法は2通りあります。1つは新しい転職先で特別徴収への切り替えをしてもらうことで転職先でも特別徴収にできます。ただし、この場合は退職する会社で普通徴収に切り替えて、新しい会社で特別徴収に切り替えることになるので手間はかかってしまいます。
もう1つは、前章でも解説しているように「給与所得異動届出書」に新しい転職先を書いてもらい提出してもらう方法です。ただしこの場合には新しい転職先がばれてしまうというリスクはあります。
Q4:転職先をばれずに特別徴収を継続する方法はありますか?
A4:あります。Q3の1つ目の方法で行うことで、転職先はバレずに特別徴収をい続けることが可能です。
Q5:退職する時に住民税で気を付けることはなんですか?
A5:普通徴収に切り替えている場合は納付する必要があることに気を付けてください。退職金などを貰えたとしても、退職の数か月後に市役所から納付書が送られてきますので、納付に必要な金額は残しておくようにしましょう。特に退職後に収入を得る予定がない方は注意しましょう。退職の時期によっては翌年の住民税も払う必要があります。
Q6:退職するタイミングは何月がいいのですか?
A6:どの月がタイミングが良いかはわかりません。収入や退職後の予定などが人それぞれのためです。退職後に収入を得る予定がない方については、年の始めの方に退職するほうがその年の収入が少なくなるので、翌年以降の住民税は少なく抑えることができるとは思います。ただし、1月から5月までの住民税が残っているので、最後の給料からの天引き額はかなり多くなってしまうことも考えられます。このようにそれぞれのためご自身の状況を考えて決めてもらうのがいいと思います。気を付けていただきたいことは辞めた後でも納付が発生することです。
Q7:退職後に自分自身でしないといけない手続きはありますか?
A7:特にありません。住民税の普通徴収への切り替えなどは会社が行うので退職者自身で行う手続きは特にないです。転職先の会社で普通徴収から特別徴収に切り替えたい場合には、転職先の会社から市町村に「特別徴収への切替依頼書」を提出してもらって特別徴収に切り替えてもらいましょう。
Q8:納期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
A8:延滞金などがかかってくるので忘れずに納期限までに納付しましょう。普通徴収の納期限は6月・8月・10月・1月の4回と決まっていますが、6月に4回分を払っても構いません。納付期限到来前のものは払うことが可能なので忘れそうな方は先にはらってしまいましょう。
Q9:ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用しているのですが影響はありますか?
A9:住所が変わっている場合には変更の申請をしましょう。住所が変わっていない場合には特に必要はないですが、住所が変わっている場合には変更届を忘れずに行う様にしてください。ワンストップ特例制度以外のふるさと納税(確定申告が必要なもの)を行っている場合は確定申告での申告になるのであまり気にしなくていいと思います。
まとめ
以上のように今回のコラムでは、従業員が退職した場合の住民税について会社側と従業員側から解説をしました。
会社側では退職をした時の事務手続きについて、退職時期別に解説をしました。
時期によって若干の違いがあるので退職の月は確認するほうがいいでしょう。
会社側としては、退職のときに「給与所得異動届出書」の提出を忘れないようにしましょう!
従業員側については、退職時の住民税についてよくある質問をQ&A方式で解説してきました。
従業員側に向けて書いていますが、会社の方で退職した従業員の方から質問などがあったときにそのまま使用していただいてもいいと思います。
最後になりましたが、私たち小林正朋税理士事務所は三重県伊賀市に事務所を構えています。
私たち小林正朋税理士事務所では三重県・伊賀市の中小企業・個人事業者を中心に、税務相談はもちろんのこと、クラウド会計の導入と経理改善にも力を入れています。
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